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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
五
便所の窓に、夜の塵を集めて風が吹きつけた。ざらざらと音がした。外は暗くて、本郷の家々は電灯を消して寝ている。月の光が瓦に射し、瓦の上に堆積したほこりや木の葉やなわの切れはしを照らしていた。物干竿があって取り忘れた着物をほしてある。私は窓の桟を力をこめて掴みながら、何ものにか襲いかかりたいような空しいさびしさを感じた。
五
目が覚めたら部屋は薄暗かった。頭の半分がずきずきと痛かった。昨夜、あれからまた宴席に戻り、苦い安酒を浴びるほど飲んだのだ。
天願氏の狭い部屋に、寝床を二つとって、その一つに私が覚めていた。雨戸がしめてあるので、暗くて時刻は判らない。雨戸に大きな節穴があって、障子に倒逆した小さい風景を映していた。天然色映画のように、何か高価な感じのする色がその風景を彩っていた。どういう景色だかはっきり判らない。私は頭を逆さまに立てて、眸を定めてその画に見入った。
ゆらゆらして遠近がわからなかった風景が次第に所を定めて来た。家があった。柿の木らしい木が軒の上に梢をのばしている。その梢のあたりが微かに動いている。白い壁があった。物干竿がかかっている。