Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
Read 湯島詣 (ゆしまもうで) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 62,004 characters · 122 screens
三十二
三十二
もとより自ら進んでも、かくはなるべき運命であったろうけれども、さまでとはさすがに思い懸けなかった、積年の憂苦辛酸、一日の安き暇もないので、お絹は身も心も疲れ果てて、その一月ばかり前から煩い出し、床に就いて足腰の自由が利かなくなると、夫狂犬源兵衛は屋外にこれを追出した。それを争う力もなくて、指す方もなく便ったのが、この耳の疎い目腐れの婆の家、この年寄の児は、かつて米搗となって源兵衛が手に懸って、自然お絹の世話にもなったが、不心得な、明巣覗で上げられて、今苦役中なので、その以前から忰の縁で、お絹にも厚意を受けた。年寄は恩を忘れず家へ引取って介抱をしてはいるけれども、活計に窮するのはいうまでもない上に、耳が遠くッて用が足りず、水一杯といっても聞えない看護を請けるお絹の身になったらどうであったろう、またこれを知りつつも、一晩と附切って介抱することのならなかった蝶吉の気はどんなであった? 人が神仏を怨むのは正にそういう時である。
そちこちする中、昼も過ぎたので、年寄はまめまめしく形ばかりの膳立をした、お菜がその時目刺に油揚。
(母さんがって上げよう、)と、お絹は一世の思出。