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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
Read 源頼朝 (みなもとよりとも) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 306,118 characters · 613 screens
「なにっ」
「政子をそんな女子と思し召してか。……口惜しゅうございます」
「口惜しいのは、この兄だ。お許は、父の立場と云ったが、宗時の立場は何となるか。――いや、自分の妹だ、わしなど愚痴すら云えまい。だが、そなたと佐殿との仲を庇って、行末の大事まで、秘かに語らい合うて来た仲間の殿輩はどうなるか」
「政子も考えておりまする」
「どう? ……どう考えてか」
「落着いてください」
「ばか、落着いている」
「そんな癇ばしったお声に、わたくしの考えている事は申されません」
「当りまえ。これが癇ばしらずにいられるか。自分の妹とはいえ、次第に依っては、お許を首にしても、誓いを交わした殿輩に対して、詫びをする覚悟でおるのだ。すこしは、声も尖ろう、眼いろも猛々しゅうなるは、むしろ兄の愛情というものだ」
「……ホ、ホ、ホ」
政子は、笑って、正直な兄を愍れむように見た。
「お兄様。あなた方の遊ばしているお企てを見ていると、お心だけは雄々しくても、為さる事は、稚い者の火悪戯のようです。すぐにそう事を壊すことばかり勇ましがっていらっしゃる」
「賢げなこと申すな」
「いいえ、貴方ばかりではありません。