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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
Read 源頼朝 (みなもとよりとも) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 306,118 characters · 613 screens
雨地・月天
一
まだまだこの地方にも、平家崇拝と平家恐怖の観念が、大部分の者の頭に、牢固として抜き難い力を持っているからであった。
雨地・月天
一
秋となった。
今朝、邦通はひょっこり帰って来た。釜殿の者や、厩舎人などに、
「永い事、どこへ旅してござった?」
と問われても、にやにや笑ったのみで奥の棟へかくれたが、いつとはなく、頼朝の手許へ、頼朝が待ち望んでいたものを届けていた。
八月七日の朝。
頼朝は、何思ったか、急にその藤原邦通と、住吉昌長のふたりを呼んで、
「わが生涯の門立ちを決する日は、いつが吉日か、謹んで卜いを立てよ」
と、いいつけた。
二人は、はっと、大きな衝撃をうけた面持で、頭を下げた。――お答えは後刻にと、すぐ退がった。
ふたりは、水垢離をとって、易をたてた。そして頼朝の前へ出て告げた。
「この月、十七日こそ、何のお障りなき吉日と考えられまする」
「十七日」
頼朝は、大きな眸をした。その眸から発したものに、二人は何という事なく驚いた。だが、気のせいでそう見えたのかも知れない。
「十七日か。よかろう」
とまた、口のうちで、凡事のように頼朝は独り答えていた。
その十三日となると、佐々木定綱、盛綱の兄弟は、頼朝の室を退がってから間もなく、