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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Read 花と龍 (はなとりゅう) by 火野 葦平 (ひのあしへい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 410,131 characters · 824 screens
おれたちのこと、碌に、面倒もみてくれやせんし、考えたこともない。今度の遠足だって、おれを外すなんて、親方の糞たれ奴」
角助が怒ると、顔が、化けもののようになる。
金五郎は、不快な気持をおさえて、
「そんないい方をしては、いけませんよ。永田の親方は、ええ人です」
「そら、そじゃろ。あんたは、可愛がって貰うて、若い身で、ボーシンに引き立てられたんじゃ悪うはいえまい。……ま、そんなこた、どでも、ええ。今度の遠足に、おれをつれて行って貰や、おれの顔が立つんじゃ。永田組の角、というて、古くから、名が通うっとるに、外されたんじゃ、この港を、向こうむいて、歩けん」
「弱ったなあ」
「弱るこたないじゃないか。あんたが遠慮すりゃ、おれが行かれる。それくらいの仁義は立てても、ええじゃろ?」
角助は、強引である。
下の伝馬船の艫から、マンが、心配そうな顔で、ブリッジを見あげている。なにかはわからないが、夫が、悪漢に難癖をつけられて、困惑している様子だけはわかる。
マンは、はがゆかった。金五郎が、強そうで、気の弱いところもあるのを知るようになっていて、
(どうして、角助なんかのいうことに、一々、かかりあうのか)と、じれったい思いで、いらいらした。