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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Read 花と龍 (はなとりゅう) by 火野 葦平 (ひのあしへい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 410,131 characters · 824 screens
遠目であるが、そのブイのまわりに、二隻の大伝馬船がつながれているのが、明瞭に、認められた。「友田」の二字を入れた数十張りの提灯が、光の針鼠のように、二箇所、海上に、密集しているので、見まちがいようがない。
「やっぱり、おれの考えていたとおりじゃったな」
金五郎は、威嚇するような、派手な光の集団を見て、おかしそうに、笑った。
「友田喜造の名で、脅かそうとしていやがる」
源十も、苦笑して、警戒する眼のいろになった。
「こっちも、提灯を点けよう」
「それが、ええ」
二人の合図で、永田組の弓張提灯に、全部、灯が入れられた。両舷の雛壇に、四人ずつ立った。六段で二十四個、提灯山笠みたいである。パナマ丸は、あたかも、大手、搦手を、軍兵によって護られた城郭のように、美しい。天主閣のうえで、ボオオウと、法螺貝のような、太い汽笛を鳴らしながら、船は、水先案内の小蒸気に誘導されて、三番ブイに近づいた。
この、ものものしい、暁の灯の祭典は、港の周辺のどこからでも望まれる。各所から、数千の好奇の視線が、三番ブイに、集中されていた。
パナマ丸が、中ノ島横を通過するのが見えると、石炭を満載した数隻の艀が、曳蒸気船に曳航されて、若松側の鉄道桟橋下から、本船に向かって、進行して来た。