Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Read 花と龍 (はなとりゅう) by 火野 葦平 (ひのあしへい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 410,131 characters · 824 screens
連歌町の角まで来たとき、うつろな気持で歩いていた金五郎は、
「やあ、玉井君じゃないか」
その声と同時に、突き飛ばされたかと思うほど、はげしく、肩をたたかれた。ふりかえって、
「品川さんですか。びっくりしましたよ」
「びっくりすることはあるまい。だが、君のように、ぼんやりして歩いとったら、いつ、敵に、ブスッと殺られるかも知れんぞ。この街は、物騒だからのう」
そういって、相手は、全身をゆすぶって、磊落に哄笑した。
「若松実業新聞」を独力で発行している、品川信健である。五十年配だが、若いころ、志を抱いて、朝鮮満洲を放浪した、大陸的な、利かぬ気と、闘志とが、てらてらと光る、酒好きらしい赤ら顔に、なお残っている。そういえば、まだ昼前なのに、もう、すこし飲んでいるようだった。
山高帽に八字髭、洋服姿の品川は、近くの者が、耳をそばだてるような、不遠慮な大声で、
「玉井君、君は、えらい。大いに、やりたまえ。大きな傘の中に入っとれば、雨には濡れん。それは、わかっとる。この若松では、吉田一派は、大きな傘というても、ええ。だが、雨にぬれても、曲った傘の中には入らん、というのが、男の意地だ。