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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
眼八は傲慢に胸を張って、
「じゃ、こいつを渡しておくから、弦之丞を召捕るまで、海部の揚屋へ預かっておいて貰おうか」といった。
海部側の同心は、言下に、
「それは困る」と拒んだ。
なぜ? と眼八がほじくると理由は簡にして明、――今、町の辻々に伏せておいた密偵のひとりが、この間から行方の知れなかった大勘がこッそりと帰ってきて、何用か、この薬王寺の道へ廻ったという報らせ。
すわとばかり、代官所の騒ぎである。
折から、助勢にきて打合せ中の徳島同心、浅間、岡村、田宮の三名も加わって、捕手はうしろ巻きとして山下に伏せ、五人は先廻りをしてここへ登ってきたところ。
「今、源次をここで預かるのは困る」と、にべなくいったのも、ムリではない。寸刻を争っているのだ。
だが、眼八は我を曲げない。
ここは、海部代官の支配区域、本来、お手前たちの腕だけで、こんな者は、とうにパキパキと召捕てみせなければならないのではないか。それを、徳島から釘抜きの眼八様が助に来てやっているんだ。おまけに、縄までかけて渡してやるんだ。もったいねえ御託をいうな――という鼻息。
慢心もあるし、郡奉行の配下というと低く見る癖がついている。