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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

Read あさひの鎧 (あさひのよろい) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 239,520 characters · 475 screens

Aozora Bunko

そうして人二人を殺したのであった。

罪悪の塊り、矛盾の子、饑え乾くごとく救いを求める者――天国に入るか地獄へ堕ちるか、分れ目の煉獄の業火に焼かれて、悶え苦しんでいる頼春は、猪小屋の中に佇んで、いま松明の光に照らされている。

「早瀬!」

と不意に呟いた。

女を殺したことによって、女の肉体を感得し、その連想が妻の早瀬へ、この時自然に延びたらしかった。

(憎い女! ……いとしい女! ……早瀬! ……妻よ! ……どうしているか※(感嘆符疑問符、1-8-78))

頬の上に光るものがあった。

瞽いた眼からの涙であった。

この頃、早瀬は山の斜面を、あやうく覚束なく辿っていた。

と、行く手から足音が聞こえた。

早瀬はいそいで木蔭へかくれた。

その前を足早に歩いて行くのは、大鉞をひっさげた、大蔵ヶ谷右衛門であった。

(この鉞へ小次郎の血を、今夜こそたっぷりと吸わせてやろう)

こう堅く決心しながら、右衛門は歩いて行くのであった。

(風見の袈裟太郎に連れられて、小次郎めこの道を来るであろう。途中に要して真っ二つに!)

こう決心をして行くのであった。

彼は以前から小次郎に対して、いい感情は持っていなかった。