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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

Read あさひの鎧 (あさひのよろい) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 239,520 characters · 475 screens

Aozora Bunko

戸野兵衛にも異存がなかった。

そこで大塔宮ご一行は、竹原の館へ移られた。

はたして兵衛の言明したとおり、十津川郷民は須臾にして、おおよそ宮家に帰服して、宮家を守護し奉るようになった。

やがて竹原入道の娘、呉服は宮家の愛を受け、入道は志しをいよいよ傾け、兵衛もことごとく悦喜して、一族心を一つにし、宮方加担に懸命した。

あわただしいうちにその年も暮れ、明けて元弘二年となり、その年の四月の候となった。

熊野本宮の別当館の、奥まった部屋で四人の者が、ひそかに話を交わせていた。

眉太く頬の肉の厚い、逞しい僧は館の主、すなわち定遍僧都であったが、脇息により中啓を突き、鬼火の姥と範覚と、大弥太とをこもごも眺めながら、

「忌なく申すがよい、忌※(「りっしんべん+単」、第4水準2-12-55)なく申すがよい」

と、三人の云い条をうながすようにしていた。

「大弥太殿は十津川のお方、地理にも人情にも詳しゅうござれば、申すお言葉も正鵠を射ていて、胸に落ちるでござります。……大弥太殿、そなたの意見は?」

こう云ったのは鬼火の姥で、いくらか荒んでいるけれど、なかなか美貌の大弥太に対し、まんざらでもない心から、その歓心を迎えるように、こう追従らしく云ったのであった。