Japanese reading practice

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おみつかんざし

お美津簪

山本 周五郎

Read お美津簪 (おみつかんざし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,158 characters · 26 screens

Aozora Bunko

「可哀相に、綺麗な簪が泥だぜ、――親方」

静かに云って、銀のびろびろの震えている簪を、珍しい物でも見るように、くるくる廻しながら戻って来た。

「ふん。ひと晩に簪の二つや三つ、泥まみれになるのは江戸じゃあ珍しかあねえ」

「全くよ、珍しかあねえ」

「だから見ねえつもりでいな、若いの」

と亭主が圧えつけるように云う、刹那、正吉の足がたっと亭主の股間を蹴上げた。

「うっ! や、野郎ッ」

呻きながら跼む奴の、手から、刺身庖丁を奪い取った正吉、ばっと上へ跳上がると、ひらき戸を蹴放して奥へ踏み込んだ。とっつきの部屋の中から物音を聞いて、

「誰だ、権兄哥か」

と障子を明けて覗く、その喉元へ、正吉はいきなり刺身庖丁を突っ込んだ、

「ぎゃッ」

悲鳴と共にのめる奴を、突放してとび込むと、部屋の中に娘を挾んでいた二人が、あっと云って立上る、のっけへ、庖丁を構えたまま、正吉が体ごと叩きつけるように突っかけた。

捨身の庖丁に強か胸を刺されて、一人がだあっと襖もろ共倒れる。その脇から、残った一人が短刀を抜きざま正吉の脾腹へひと突き、

「――野郎!」

「あッ」

と正吉、振返りざま其奴の脇下へ、骨も徹れと庖丁を突っ込んだ。