Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんぱくのはなし
しんぱくの話
小川 未明
Read しんぱくの話 (しんぱくのはなし) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,076 characters · 7 screens
あくる日のこと、すぐ近くで、人間の声がしました。さるのごとく、岩角を伝わって、綱を頼りに下りてくる男を見ました。腰には、岩を砕き、根を切る道具を結びつけていたので、しんぱくは、だれを目あてにやってくるのか、すぐに悟ったのでありました。
「ああ、いい木だ。長いことにらんでいたのだが、まったく命がけでなければ取れるところでない。」と、年をとった男は、独りごとをしました。
そして、そこで、幾十年生きてきたしんぱくを、岩角から切りはなして、その根もとを掘り抜くとしっかり背負って、綱をたぐって上がってゆきました。しんぱくは、かつて自然をおそれて、人間にどれほどのことができるものかと、考えていたことの、たいへんなまちがいだったのを、この瞬間に悟ったのであるが、それから、自分はどうされたのであるか、先のことはわからなかったのです。
木が、やっと元気を快復して、はっきりと見、また聞くようになったのは、ある大きな盆栽師の庭園でありました。そして、自分は珍しい支那鉢に植えられて、一段高い、だんの上に載せられていたのでした。
夜になると、風は吹いたけれど、あのむちを振り、ひづめを鳴らして過ぎるようなあらしではありませんでした。