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ゆうれいかしや

ゆうれい貸屋

山本 周五郎

Read ゆうれい貸屋 (ゆうれいかしや) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,320 characters · 42 screens

Aozora Bunko

ふざけているようにもみえたが、ともかくも寝床を敷いて寝かした。彼女は夜中まで鼾きをかいて眠っていて、それから眼をさまして、「ぼんのくぼで、蟻が行列をやっている」

などと云いだした。追っぱらってくれと云うので、よく見たが蟻などはいなかった。

「いないことはないよ、よく見ておくれよ」

母親は子供のむずかるようにせがんだ。

「ほらほら、ぼんのくぼから頭へ行列してるじゃないか、ほら髪毛の中へぞろぞろはいってゆくよ、ああいやだ、追っぱらっとくれよ、額のほうまで行列して来るよ」

そしてほどなく、うーんと唸った。気持のよさそうな、ああいい心持だというような唸り方であった。それが死ぬ合図であった。

弥六はもとから、勤勉とはいえなかった。だが母親が亡くなると、初めて本性を現わした。仕事をすれば慥かな腕をみせるが、だんだん仕事をしなくなっていった。そうかといって、道楽をするわけでもなかった。父親と違って彼は酒を飲むし煙草もすう。おんなあそびも避けはしない。だが、無ければ無いでも済んだ。

「浮かない顔をしてるわね、あんた、お酒でも買って来ようか」

女房がそう云うと、彼は欠伸をする。