Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
Read ゆうれい貸屋 (ゆうれいかしや) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,320 characters · 42 screens
四 これは乙なり夜だけの妻
もちろん、返辞はなかった。路次で騒いでいる子供たちの声が聞える。弥六は体のそこここをぼりぼり掻き、それから独りでつぶやいて云った。
「そうか、ゆうれえだから、昼間はだめか」
四 これは乙なり夜だけの妻
夫婦がための盃をした証拠はある。明け方まで続いた、濃艶な契情の記憶もあざやかだ。また晩にねと、約束もした。
しかし本当だろうか、来るだろうか。いや来やあしまい、あんまり話がうますぎる。たぶんこれっきりのこったろう。そうとすれば惜しいもんだが、しかし、ことによると来るかもしれねえ、なにか来るようなくふうはねえものかしら。
二年間のやもめぐらしも、そろそろ飽きてきた。膚さみしくもなってきた。そこへこの幸運である。しかも粋な辰巳の姐さん、稼げ稼げと云わないばかりか、向うで酒肴を持って来る、たとえゆうれえでもなんでも、こういうのをのがす手はない、まして閨中のあの情のこまやかさ。
「こいつあ逃せねえ」弥六は珍しくいきごんだ、「なんとか法はねえかな、なんとかその、ゆうれえのきげんを取る法は、……うん、うん、いやいけねえ、そいつはだめだ、そいつは」
彼は考えた。考えなおした。