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ゆうれいかしや
ゆうれい貸屋
山本 周五郎
Read ゆうれい貸屋 (ゆうれいかしや) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,320 characters · 42 screens
「よく云った、そいつあ本物だ」家主は横手というものをぽんと打った。
「亡くなった父母に見て貰おうてえのは冗談ごとじゃあねえ、弥六、おめえよくそこに気がついてくれた、おらあ嬉しいぜ」
「あっしのほうが、よっぽど嬉しい」
「これで、弥八もおふくろもうかばれる。お兼さんにもすぐ知らせよう、お兼さんがどんなに喜ぶか、……きっと泣きながらとんで来るぜ、泣きながら」
平作老は眼をこすった、「いいか弥六、こんだあぐれるなよ、お兼さんを大事にするんだぞ、いいか、ああ読んでやる、読んでやるとも、おれの一世一代だ、十万億土へ響きわたるくれえ立派に読んでやる」
家主の平作老は、仏壇の前へいって坐り、もういちど鉦を鳴らし、やがて静かに般若心経を誦し始めた。
「これで成仏してくれお染」弥六も合掌しながら、心のなかでこう云った。
「紙屑買い屋も爺さんも婆さんも、浮気娘もついでに成仏してくれ、頓証菩提、なむあみだぶつ」
ゆうれい貸屋という、前古未曽有な、しかもすばらしく有利な事業は、こうして不幸にも創業まもなく解消した。世に有難きは女のまことであり、恐るべきは女の嫉妬である。
今に至るも、この商売は絶えて行なわれないが、誰か開業のお志のある方はないか。