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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

Read 三国志(八) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.

N1 · advanced · modern kanji and kana · 195,604 characters · 391 screens

Aozora Bunko

馬謖を斬る

一

そしていよいよ各所の要害を厳重に守り固めさせ、やがて長安へ向って凱旋の途についた。

馬謖を斬る

一

長安に還ると、司馬懿は、帝曹叡にまみえて、直ちに奏した。

「隴西諸郡の敵はことごとく掃討しましたが、蜀の兵馬はなお漢中に留っています。必ずしもこれで魏の安泰が確保されたものとはいえません。故にもし臣をして、さらにそれを期せよと勅し給わるならば、不肖、天下の兵馬をひきい、進んで蜀に入って、寇の根を絶ちましょう」

帝は、然るべしと、彼の献言を嘉納されんとしたが、尚書の孫資が大いに諫めた。

「むかし太祖武祖(曹操のこと)が張魯を平げたもう折、群臣を戒められて、――南鄭の地は天獄たり、斜谷は五百里の石穴、武を用うる地にあらず――と仰せられたお言葉があります。いまその難を踏み、蜀に入らんか、内政の困難をうかがって、呉がわが国の虚を衝いてくることは必然だといえましょう。如かず、なお諸境を堅守して、ひたすら国力を充実し、蜀呉の破綻を待つべきではありますまいか」

帝は、両説に迷って、

「司馬懿。如何に」

と、たずねた。仲達は、

「それもまた公論、易安の一理です」

と、あえて逆らわなかった。