Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
せけんし
世間師
小栗 風葉
Read 世間師 (せけんし) by 小栗 風葉 (おぐりふうよう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,390 characters · 36 screens
五
銭占屋も諢う。私も女房が可哀そうであったから、銭占屋だけにその訳を談して聞かせると、
「そうか、そいつあ知らなかった。万年屋め、薄い頭がなお禿げたろう、ははは。」と大笑いをして、「その口ぶりじゃ、嚊の方はもう辛抱して還る気はねえんだね。そのはずさ、七八年も世間師をしていちゃ、旅人根性は生涯抜けやしねえ、今さらとても土百姓に返られるものか。」と言った。
五
女房の話では、万年屋は永くも五日ぐらいの予定で行ったのだそうだが、それが六日経っても七日経っても帰ってこない。そのうちに亭主が遺いて行った銭もなくなりかけるし、女房は弱りきっていた。同宿の者もおかしがって、手紙でも出したらと勧めたが、郷里といっても定まった家があるのではなし、どこにいるのかそれすら分らぬのだ。階下でもさすがに二晩や三晩の屋根代ぐらいは猶予もするが、食う物は三度三度自分で買わねばならぬ。商売物の万年筆でも拵らえて、一人で売りに出たらと勧める者もあったが、その万年筆がやっぱり一人ではできぬのだそうだ。ほかの事は見様見真似で行くが、肝心の管を巻くのと、栓に針線を植えるのとが大事の呼吸もので、亭主の熟練でなくてはだめだとの事。