Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

いまどしんじゅう

今戸心中

広津 柳浪

Read 今戸心中 (いまどしんじゅう) by 広津 柳浪 (ひろつりゅうろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,688 characters · 74 screens

Aozora Bunko

と、小万も吉里が気に触らないほどにと言葉を添えた。

「また無理をお言いだよ」と、吉里は猪口を乾して、「はい、兄さん。本統に善さんにゃ気の毒だとは思うけれど、顔を見るのもいやなんだもの。信切な人ではあるし……。信切にされるほど厭になるんだもの。誰かのように、実情がないんじゃアなし、義理を知らないんじゃアなし……」

平田はぷいと坐を起ッた。

「お便所」と、小万も起とうとする。「なアに」と、平田は急いで次の間へ行ッた。

「放擲ッておおきよ、小万さん。どこへでも自分の好きなとこへ行くがいいやね」

次の間には平田が障子を開けて、「おやッ、草履がない」

「また誰か持ッてッたんだよ。困ることねえ。私のをはいておいでなさいよ」と、小万が声をかけるうちに、平田が重たそうに上草履を引き摺ッて行く音が聞えた。

「意気地のない歩きッ振りじゃないか」と、わざとらしく言う吉里の頬を、西宮はちょいと突いて、「はははは。大分愛想尽しをおっしゃるね」

「言いますとも。ねえ、小万さん」

「へん、また後で泣こうと思ッて」

「誰が」

「よし。きっとだね」と、西宮は念を押す。

「ふふん」と、吉里は笑ッて、「もう虐めるのはたくさん」