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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
Read 光り合ういのち (ひかりあういのち) by 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,439 characters · 263 screens
小さな足が流れを横ぎり出した。二人はころばぬようにしっかりと手を握り合っていた。
思えばその夜が二人にとっての一番の接近であった。その後間もなく、彼女一家には災難が起った。というのは仁田さんが官有林の木を伐ったという嫌疑が小林区からかけられた。丑寅神社の絵馬殿を建てるために境内の樹を伐ったのが、境界の不明のために、そうした事になったのであった。
仁田さんは裁判所へ行ったり来たり、せねばならなかった。そして仁田さんの敵はそれを色々取り沙汰して中傷に利用した。尾福日報という地方新聞がそれを取りあげて、仁田さんに不利な記事を書いた。仁田一家の人々はそのために狭い尾道の世間を憚るようになった。
仁田さんは当分謹慎の意を表すると言って、万葉の講義も止してしまった。
氏子総代の伯父にも裁判所から呼び出しがあって、行き違いから仁田さんとも気拙い事があった。
そんな事で鈴子の家へ私が行かなくなったのと、鈴子の方でもいじけたりして、境内などで逢いは逢いながらも、前のように滑らかに行かなくなった。
もとより尾道にもっと長く私がいられたら、そんな偶然的な障碍は時が経てば解消したであろうが、私は程なく三次の中学へ、再び学業へと復帰せねばならなかった。