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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
Read 光り合ういのち (ひかりあういのち) by 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,439 characters · 263 screens
年少時代
1
又杖を突いた祖母に連れられて、勝光寺という静かな竹林のある寺の庫裡で、竹の子飯をよばれた時の記憶、眉の真白な、歯のない老僧と、歯をおはぐろで染めて、眉毛を落したとても優しかった接待の女房のことが、いつまでも柔和とやさしさの象徴のように浮んで来るのだ。
心の中のイメージを呼びさまし、想像力の機縁となるどんな貧しい材料でもありさえすれば、人間は天国を目の前にまねき寄せ、天使たちの饗宴にも逢い、美しき夢の国の乙女たちを見ることも出来るものだ。材料の如何によるのではなく、実に心の浄さと、法慾と、対象に没落し得る殉情とによって。
幼きものはさいわいなるかな。その汚れにしまぬひとみには、矚目のものみな象徴であって、永遠の鮮しき光を放つゆえに、願わくば、天使たちの護りいつまでも童男童女たちの上にあれ。
私は幼年時代の追想をここらで、惜しみをもってではあるが、終ることにしよう。
年少時代
1
比叡尾の山のあけぼのに
くれない匂う花がすみ
日熊の紅葉錦繍の
もすそに寄する霧の海
万岳の翠たたえ来て
巴えがくや三つの川
美しき巴峡の片ほとり
立てるは三次中学校
分家の武村の従兄良一君は休暇に帰るとこの歌を唱って聞かせた。