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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
Read 凡人伝 (ぼんじんでん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 98,944 characters · 202 screens
二人偶然私の部屋で落ち合った時だったから、
「昨夜は吃驚したぜ」
と私は諷するように言ってやった。
「静岡県の方が強かったろう?」
「何あに、群馬県の方が強かった」
「本当にやるんだなあ、君も」
「小突かれちゃ黙っていられないよ」
「人前があったからね」
「おれも騎虎の勢さ」
「ハッハヽヽヽ」
「ハッハヽヽヽ」
と二人はもう何等蟠りがない。
懇親会は喧嘩で中止になったが、私達同級生は間もなく胸襟を開いて交際を始めた。同じ寄宿舎にいて、何も彼も一緒だから事が早い。通学生は佐伯君と谷君丈けだった。この二人は、
「僕達は腰掛だよ」
「然うとも。明治学園、飯が食えん。こんなところに卒業するまでいちゃ大変だ」
と言って、官立学校の試験を受ける為めに、英語の授業丈け択り食いをしていた。
「彼奴等は何ういう料簡だろう? 母校を馬鹿にしている」
と高木君が憤慨した。しかし母校ばかりでない。二人は江戸っ子を鼻にかけて、私達地方出の新入生を馬鹿にした。訳解の輪講中、私がつかえると、
「新田のお兄さん、しっかり!」
なぞと冷かした。厭な奴等だと思って、此方も口をきかない。その中に野崎君が、
「佐伯って奴は生意気だ」