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けんのよんくんし
剣の四君子
吉川 英治
Read 剣の四君子 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,514 characters · 22 screens
――とお縋り申すからには、今日以後、悪行を止めて完き武士となるよう志すことを、三名、神に誓い申しての上でござる」
甚助は、乞を許した。しかし、誓約に止めて後日の再会を約し、なお行くと、また彼を追って来た者がある。岩村田の近郷に住む田宮平兵衛という郷士だった。
「願わくば拙者をお弟子として伴れ給え」
切実な願いなので、田宮だけは供にした。やがて京都へ着いた。そしてあらゆる苦心と手引を経て、松永久秀の幕下にいる父の讐敵坂上主膳と出会うことができた。
主膳を斬った際も、信国の鍔が、彼の手に鳴ったせつな、実にただ一刀しか費やされなかったということである。唯、遺憾ながらその場所や、当時の実状など、史録には明確を欠いている。
居合という言葉は、後世にできた称び方であろう。彼の創始した抜刀法――後に称えたところの林崎夢想流とは、純正剣道の一流であって、本流の剣に、剣とは不可分な抜刀の神息をふきこんだものに他ならないのである。
彼に随身した田宮平兵衛は、後に、
――柄に八寸の徳、みこしに三重の利。
という有名な居合の名標語を吐いた人で、抜刀田宮一流の別派を興し、当時の達人ともいわれて、林崎夢想流麾下の第一人者と目されるに至った。