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けんのよんくんし

剣の四君子

吉川 英治

Read 剣の四君子 (けんのよんくんし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,514 characters · 22 screens

Aozora Bunko

「喰べたくない」

と重ねて云うのである。

長柄を横に置いて、朽ちた鳥居の下に腰をおろし、眼すら、ぽつねんと、雲へやって、菓子を見ないのであった。

「そうかい」

守人は、強いなかった。

顔をのぞいて訊ねた。

「甚助。どうかしたのか。この頃は、樹の梢へかかって、見事に枝を伐ろす姿も、ちっとも見かけないが」

「おじさん、どうしたんだろ」

「わしが訊いてるのだよ。どうかしたのかと」

「おらにも分らない。――この頃は、いくら樹へかかっても、今までは切れたぐらいな高さの梢も、急に斬れなくなってしまった」

「それはふしぎだな」

「だから、もう、樹を伐るのは、嫌になった。……だけど、伐って見せないと、おっ母さんが、笑ってくれない」

「甚助、おぬしももう、十四だな。この頃は、よその子とも、遊ばぬのう」

「つまらないもの」

「考え事が胸にでき宿り始めたのじゃろ。何か、人にも云えぬ考え事が」

「ああ、無いこともない」

「そのためだ。わしに話してごらん」

「神主さん」

甚助は、ふいに立って、守人の胸へ、抱きついた。しゅくしゅくと泣き出したのである。

「なんだ、なんだ、男のくせに」

「おらの……おらのお父さんは、戦で死んだのじゃないのかい。