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こじょうのまひる
古城の真昼
野村 胡堂
Read 古城の真昼 (こじょうのまひる) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,644 characters · 28 screens
三
「イヤ」
子爵の言葉が終らぬ内に、スックと立ち上った和服姿の若い紳士があります。これは生月駿三という近頃売り出した「テアトル築地」の新劇俳優、貴公子揃いの中でも特別上等の美男、本当に水も垂れそうな男振りです。
「子爵のお言葉ですが、これは矢張り倶楽部の名誉のために、一同揃って探検に出かけた方が宜しいかと思います。警官百五十人で包囲して置けば、先ず絶対に危険は無いと言っても宜しいでしょう。それにたった一人の判官三郎に恐れたとあっては、私共はこれから後、人に合せる顔がありません」
「行こう行こう」
「卑怯者だけ残れ」
こうなってはもういけません。玉置子爵は苦笑してドッカと安楽椅子に身を埋め、蜂屋文太郎は会心の笑を浮べてすっくと起ち上りました。
「みっちゃん、お茶を人数だけ、前祝いに景気付けよう」
「ハッ……ハイ」
衝立の蔭から美しい女給の声、居眠りでもして居たのでしょう、僅に顔をあげた風情で、こう応えました。階下からは蓄音機でジャズの響き、神田の十一時は未だ宵です。
三
一行十二人、玉置の城趾に集ったのは、その翌る日の十時頃でした。常磐線の寒駅から田圃道を一里ばかり、二つ三つ坂を登ると、ある小山の中腹を切り開いた台地に出ます。