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うもんとりものちょう
右門捕物帖(一)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(一) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 220,431 characters · 428 screens
「さよう――住持が大の碁気違いじゃそうでの。それから、なんでもあの小女に、もうひとり有名なおくびょう者じゃそうなが唖の兄とかがあって、どういうつごうでか、その兄もいっしょに養われているとかいうことじゃわ」
濠向こうの寺、そしてその寺の養女とおくびょう者の唖の兄? ――なにものか胸中に明察のついたもののごとく、ぴくりとまゆを動かして考え込んでいましたが、そのまま右門はおし黙って、ぷいと立ち去りました。ただにぷいと城中を立ち去ったばかりではなく、実に不思議――それっきりむっつり右門の姿は、どこへ行ったものか、皆目行くえがわからなくなってしまいました。宿へもかえらず、おしゃべり屋の伝六もそこへ置いてきぼりにしたままで、さながら地へもぐりでもしたかのように、煙のごとく城下からぷいと消えてなくなってしまいました。
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けれども、そのかわりに、同じ日の夕暮れどきから、むっつり右門のいなくなったのに安心でもしたかのごとく、ぽっかりとどこからかひとりの怪しい秩父名物のさるまわしが、忍の城下の羽生街道口に現われてまいりました。見ると、そのさるまわしはもう五十をすぎた老人で、腰はよぼよぼと弓のごとく曲がり、目にはいっぱいの目やにがたまって、顔は赤黒く日にやけ、いかにも見すぼらしいかっこうでした。