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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,558 characters · 480 screens
出ろッ、出ろッ」
さぞや死にもの狂いに手向かいするだろうと察して、景気をあおりながら伝六が用心しつつおどり込んでみると、これがふるえているのです。いろはがるたを地でいって粂五郎は、土に頭をもぐらせんばかりにしながら、必死とちぢこまりつつがたがたとやっていたさいちゅうなのでした。
「なんでえ。そのざまは! どこからどこまでもちゃちな野郎じゃねえか。出ろッ、出ろッ。しゃれにもならねえじゃねえか。どろへもぐったからにゃ吐くどろもあるにちげえねえ。とっとと恐れ入っちまいなよ!」
ひきずり出して、ここを晴れの舞台と伝六が締めあげようとしたのを、
「荒締めゃ身の毒だ。待ちな、待ちな」
ぴたり押えながら名人が静かに歩みよると、穏やかに、しかし、ぴーんと胸にしみ入るようなことばが、ふるえている粂五郎の頭上に下りました。
「上には慈悲があるぞ! 目もあるぞ! しかも、このおいらの目玉は、雨空、雪もよう、晴れ曇り、慈悲にもきくがにらみも江戸一ききがいいんだ。なんぞおめえ細工をしたろう。すっぱりいいな」
「いいえ、あの、あっしが、あっしが――」
「あっしがどうしたというのかい」