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うもんとりものちょう
右門捕物帖(四)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(四) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,105 characters · 337 screens
ぐるりと回って帰ってみると、伝六はまだくろとしきりに押し問答をしているさいちゅうなのです。
「後生だから走っておくれよ。何が気に入らなくて、そんなに長い顔をしているんだ」
「…………」
「返事をしなよ、返事を! むりな頼みをしているんじゃねえんだ。おまえは走るが商売じゃねえか。まねごとでもいいから、ちょっくら走ってくんなよ」
せつな。
くろがたてがみをさかだてたかと見るまに、パカパカとすさまじい勢いで走りだしました。
「お、お、おい! な、な、なにをするんだ。冗、冗、冗談じゃねえよ! 本気で走らなくたっていいんだよ! まねごとでいいんだ! よしなよ! よしなよ!」
必死に叫んだが、いまさら止まるはずはない。伝六ごときが、そもそも馬に乗ったのがまちがいなのです。
「一大事だ、一大事だ! だんな、だんな、止めておくんなさいよ。伝六の一大事なんだ。早くなんとかしておくんなさいよ!」
「うまい、うまい。腰つきがなかなかみごとだぞ」
「まずくたっていいですよ! はやしたてりゃ、くろめがよけいずにのって走るじゃござんせんか。よしなよ! よしなよ! くろ! おまえもあんまり薄情じゃねえか! わかったよ、わかったよ! そんなにむきになって走らなくとも、おまえの走れるのはもうわかったんだ。