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うもんとりものちょう
右門捕物帖(四)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(四) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,105 characters · 337 screens
何か見のがしていやしねえかと考え直しているうちに、ふといま思い出したんだが、おまえは物覚えのいいのが自慢だ。何か思い出すことアねえかい」
「はてね。いかにももの覚えのいいのは自慢だが、品によりけり、ときによりけりでね。いっこう心あたりはねえが、なんですかい」
「灸よ。にんにく灸のあとよ」
「ちげえねえ、なるほど、ありましたね。ええ、ありましたとも! あのもちはだにやけどのあとをこしれえて、もってえねえまねしやがると、じつアちっとばかりしゃくにさわっていたんですが、それがどうかしたんですかい」
「決まってらあ、いましがたお秋はたしかに、当夜お冬のそばから片ときも離れなかった、といったね」
「ええ、いいましたとも! りっぱにいいましたよ」
「しかるに、障子の穴からお冬の手がにゅっと出ているんだ。それがちっとおかしかねえかい」
「ふん、なるほど、おかしいですよ」
「そうだろう。おかしいだろう。しかもだ、冬坊に灸をすえたのはだれだと思うよ。そのお秋がすえたといったじゃねえか」
「かたじけねえ! そろそろ眼がついてきやがったね。なるほど、灸がおかしいや、なにも式の晩になってやらなくともいいんだからね。