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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Read 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) by 正岡 容 (まさおかいるる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 147,226 characters · 295 screens
あるとき、飲み過ぎて病気になった。
医者がきた。
「酒飲んだらあかんでほんまに」
医者は叱った。
「ヘイ。先生、ほたら葡萄酒は」
海老団治は訊ねた。
「ウム」
しばらく小首を傾げていたが、
「葡萄酒やったら大事ないやろ」
「へ、かましめんか。大けに」
その晩、海老公飲みも飲んだり、たちまち葡萄酒一打半。
さすがに医者があきれ返って、
「……海老やん、あんた日本酒のほう、飲みなはれ」
なかでもいちばん今松が引っくり返ってよろこんでしまったのは、鼠釣りの一件だった。
毎晩寄席から帰って海老団治が飲んでいると、天井で鼠が暴れていけない。
「よウし」
親父海老蔵の使い古しの釣竿を持ってきて牛肉の佃煮の餌をつけ、踏台を持ってきて一枚だけ天井板をずらすと、そこから餌のついた奴を、天井の奥へ放り込んだ。そうして釣竿を火鉢のへりへこう立て掛けてチビリチビリと飲んでいた。果たせるかな、今夜も鼠は暴れだした。
とみる間にチュチュチュチュチュッ。
とたちまち一匹、引っかかったのだろう。急にけたたましく鳴き出した。
「ざまアみさられ」
ニコッと笑って踏台へ乗り、天井のなかへ手を突っ込んで狼狽え騒いでいるその鼠をつかみ出すと、咽喉から釣針を吐き出させてやり、その代わり鼠の首っ玉へ釣糸を首輪のように巻きつけ、その首輪の結び目へこれも釣のとき浮子