Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Read 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) by 正岡 容 (まさおかいるる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 147,226 characters · 295 screens
ときどき地もぐりや赤棟蛇が、その鬱陶しい枝々をつたわって、楽屋の破れ畳の上へ落っこちた。
蛇もまた大嫌いな今松は、身体中を総毛立たせて悲鳴を上げた。
暑さ。
雷鳴。
蛇。
よりによって嫌いなこの三題噺に、次々とおそわれて、いい加減、今松はウンザリしてしまった。かてて、加えてひどい不入り。
去年、師匠のところを飛び出して梅朝さんたちと出かけた東海道筋の旅は、同じ夏でももっと涼しく楽だった。
やけのやん八で出た旅に変わりはなかったけれど、それでもあのときの旅のほうが、もっともっと自分の心というものに張りがあった。
もし、あの旅を腹立ちまぎれの茶屋酒にたとえるなら、今度の旅はまさにそのあとの宿酔の苦しさ辛さ不愉快さだったと言えよう。
それには、海老団治は別として、一座の紋兵衛、団丸、麦松。
みんな上方根性の好かない野郎どもばかりだった。
一杯飲むとすぐ、自分の日常のことを話し出す。それがみな、しみったれたことばっかりで、一向に芸人らしい話題でなかった。
またしてもまたしても、むてい今松には肝に障らずにはいられなかった。
まず、紋兵衛だ。
昔、東京へ行って、握りの鮨を食べに入ったとき、酒を一本注文すると、鮨の上にのっかっている鮪や穴子を上剥ぎして酒の肴の代わりにした。