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よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

Read 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) by 正岡 容 (まさおかいるる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 147,226 characters · 295 screens

Aozora Bunko

「真」を写したその次には、この二つの要領が大切だ。

では、ひとつの「姿」を写し取るたびどこを略すか、どこを美しく愉しくするか。

その要領は教えられない。

場合場合によって猫の目のように変わるものゆえ、ひたすら、多年の練磨によって、自分で悟っていくよりしようがない。

つまり禅家でいうところの「曰く、いい難し」あれである。鐘が鳴るのか撞木が鳴るか、鐘と撞木の合いが鳴る微妙不可思議のところだろう。

錬磨に錬磨を重ねるべし。

腐心に腐心を重ねるべし。

そうして、悟れよ。ひたすらに悟れよ。

師匠はこうもまた言ってくれた。

いちばんおしまいに与えてくれた戒は、さらに一段と難しいところのものだった。

それは、こうだ。

ほんとうの修業を積んだ奴の「芸」は、一点一画はじつにキチンとよくできているが、それだけに万事が理詰めで陰気くさい。従って人を愉しませない。従って人気もパッとしない。

チャランポランの修業をして、才気ひとつで飛び出してきた奴は、噺のなかの人物の雌雄の区別もつかず、万事万端でたらめの代わり、そこになんらの理に落ちるところなく、フワフワフワと春の日の石鹸玉みたいだから、派手でおかしい。