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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Read 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) by 正岡 容 (まさおかいるる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 147,226 characters · 295 screens
圓太郎はがま口の中から昨日の二十銭銀貨を四枚取り出した。
「いいンだよ、いいンだよ」
あわてて圓朝は押し返した。
「なにもやったお金を返してくれと言うンじゃないよ。取っておおき、取っておおき。それはお正月のお小遣いにあげたんだから」
「そうですか師匠、でもなんだか……」
「いいンだよ、しかし圓太郎。お前はよくよく大工は名人だねエ。昨日吊ってくれたあの棚ねエ、あれもすぐに落ちてしまったよ」
「アレ」
圓太郎は丸い目をさらに丸くした。
「それもいいけど、お八重が直したらすぐ吊れて、今度は落ちもなんともしないよ」
情けねえことになったもンだ。じゃ俺が吊った棚の後始末はお八重ちゃんがしたのかイ。アア、それであの子、俺に愛想をつかして、今朝は姿も見せないンだな。
「しかし師匠、あれが落ちるわけがねえンだがなア」
未練らしく圓太郎は言った。
「だって、お前、落ちたものはしょうがない。女のお八重に吊れるものが、男の、まして大工のお前さんに吊れないンだ」
圓朝は笑った。
「でもそんなそんな。そんなはずはほんとにないンだけれどなア」
なおもひとしきり小首を傾げて考えていたが、やがてのことにポンと手をうって、