Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

じごくふうけい

地獄風景

江戸川 乱歩

Read 地獄風景 (じごくふうけい) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 53,774 characters · 108 screens

Aozora Bunko

コンクリートの皮膚を持つ大鯨が、腹痛を起して、のたうち廻った。

「しまった。木島さん、逃げられた。僕の袖の下をくぐって。あっちだ。あっちだ。食道の方だ」

治良右衛門が叫んで、いきなり駈け出した。心臓の大提燈をかいくぐり、張ボテ肺臓を押し分けて、食道の方へ、トンネルの様な暗闇の細道へ。

怪物は子供の様に背が低くて、猿の様に身軽だった。彼は天井の低いトンネルを、立ったまま走れた。身体を折り曲げて、頭をコツコツやりながら、不自由に走る二人の大男は、迚も彼の競争者ではなかった。

治良右衛門と木島刑事とが、やっと鯨の胎内を抜け出して、夕暮れの木立ちを見渡した時には、例の怪人物はどこへ逃げ去ったのか影もなかった。

「やっぱりそうでしたね」

鯨の口の外にボンヤリ突立った刑事が意味ありげに云った。

「僕はあいつを信用しているんだが。変ですよ」

喜多川氏は首をかしげた。

「あなたも、あれが背むしの餌差宗助だったことを否定は出来ないでしょう」

「エエ、外にあんな格好の奴はいないから。併し、どうも不思議だ」

「これを見れば分るかも知れません。僕はさっきあいつがこんな紙切れを落したのを拾ったのですよ」