Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

じごくふうけい

地獄風景

江戸川 乱歩

Read 地獄風景 (じごくふうけい) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 53,774 characters · 108 screens

Aozora Bunko

一つ一つのガラス窓を、丹念に覗き始めたからだ。

治良右衛門と木島刑事とは、肩を並べて、一つの大きなガラス張りの前に立っていた。

そこは魚類ではなくて、異形な海草ばかりを集めた水槽であったから、ガラス窓一面、魔女の乱れ髪が逆立って、泥沼の様な陰影を作っている為、いくら電燈があっても、見通しが利かず、疑えば最も疑うべき場所であった。

「ここには、大きな魚でもいるのですか」

刑事が不思議相に尋ねた。

「イイエ、ここは海草ばかりです。魚なんて一匹もいない筈です」

この答えが、刑事を飛上らんばかりに驚かせた。

「でも、君、あのゆれ方は、あの菎布の葉のゆれ方は」

見ていると、海草のヌルヌルした青黒い密林が、おどろおどろと乱れゆらいで、白い五瓣の花が、ポッカリと咲き出でた。生白い五つの花瓣はひとでの様に物欲しそうに、キューッキューッと海水を締め掴んだ。

「手だ、君、人間の手だ!」

それは明かに、人間の五本の指であった。しかも断末魔にもがき苦しむ指であった。

指にかき拡げられた海草のうしろから、ニョイと、大きな口が現われた。口ばかりの大きな畸形児の顔が。彼は空ろな目を一杯に見開いて、口からは滝津瀬と真赤な絵の具を吹き出しながら、水の中で何かわめいていた。