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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Read 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) by 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 108,647 characters · 215 screens
臣は今日出家して、陛下の為めに功徳を修はむと欲ふ。天皇聴したまふ。即日出家して法を服たまふ。」と日本書紀のしるすごとくであった。
然るに群卿は、東宮の威徳を畏れ、すでに出家して吉野山に入られた後を襲わんとしたのである。ここに於て一旦出家された大海人皇子は軍勢をととのえ、敢然として近江朝の軍と対された。さきに上宮太子の御子山背大兄王は、蘇我入鹿の軍に襲われたとき、御一身のため万民を煩わすを慎しみ給い、「身を捐て国を固くせむは、亦丈夫ならざらむや」と法隆寺に自頸されたのであったが、大海人皇子はすすんで難に挺身されたのである。
書紀によれば、大海人皇子は「生まししより岐嶷なる姿有り、壮に及びて雄抜しく神武し」とある。即ち剛毅英邁の君であらせられたことがわかるが、同時に激しき熱情と、またその影のごとく深き憂いを伴うておられたことは、万葉集の名歌によっても明らかであろう。天智天皇、蒲生野に遊猟し給える時、額田王の歌った、「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」という歌に対し、東宮の大海人皇子の答えた有名な相聞がある。
紫草のにほへる妹を憎くあらば人嬬ゆゑに吾恋ひめやも