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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens
さあ、おいで、今度は二人で、威勢のいいところを踊ろう」
「何を踊りましょう」
「何をって、お前のなんぞはみんな出鱈目じゃないか、何でもいいように踊り、あたしの方で合わせるから」
「それじゃ、潮来出島を踊りましょう、でなければ、さんどころ、さんどころ」
「何でも勝手に踊りなさい、さあ」
兵部の娘がさしのべた手をとった茂太郎は、やっぱり般若の面を左の小腋にして立ち上ると、勢いよく、
いざやさんおき
津島の参りてさんならさんなら
さんどころ
エイサノエイサノエイ
と足拍子面白く踊り出したから、兵部の娘もそれに合せて、茂太郎の手を引いたまま、道行ぶりで踊り出しました。
友は持つべきもの、弁信法師がついていれば、こうまで有頂天にはなるまいに。
片手の自由が般若の面に殺されているのに、片手は兵部の娘に取られているものですから、茂太郎は身体だけで丸太ン棒のハネるように、ハネ踊るのがおかしくもあり、窮屈千万でもあるようでしたから、兵部の娘も少しからかってやる気になり、海の水がさして来たところで、握っていた手をキュッと締めて軽くつき放すと、
「あっ!」
といって被害を受けたのは当人ではなく、寝るから起きるまで、後生大事の般若の面が、あっという間もなく、腋の下から放れて飛びました。