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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
Read 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 214,131 characters · 423 screens
それが東口から赤柄の菱槍を突いて出て来る足許は、一歩は高く一歩は低いものであります。
「なるほど……あの足だな、あれがヒマラヤ山で虎に食われた足なんだ」
その跛足がまた大喝采。
「イヨー、舶来の加藤清正!」
「虎狩りの名人! 日本一! 世界一!」
見物は喚く。
「先生」
「与八」
「看板の通りだね」
「看板の通りだよ」
やがて真中の土俵まで出て来た印度人、光る眼をギョロつかせて四方を見る。どんな心持でいるのだか、色が黒いから面の上へは情がうつりません。
「キーキーキー」
白い歯を剥き出して、猿の啼くような声を出して、左の手を高く挙げました。
「あれが向うの挨拶なんだね、日本でこんにちはと言うのを、印度ではキーキーと言うんだろう」
「それに違えねえ」
印度人は、キーキーと言いながら、右の手には槍を持ち、左の手は高く挙げたまま、グルリと見物を一週り見廻して正面を切ると、一心に見ていた道庵先生と期せずして面がピタリ合いました。
道庵の面をしばらく見詰めていた印度人。他目には誰も何とも気がつかなかったが、印度人はブルブルと慄えて、危なく槍を取落すところを、しっかりと持ち直して、わざとらしく横を向きました。