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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Read 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 264,133 characters · 524 screens
十一
の先へその下駄を突掛けたものの、そのやり場に窮してしまいます。
やむことを得ず米友は、その下駄を手許へ引取って、片手でぶらさげて、その場を立去るよりほかには詮方がなくなりました。行く行くどこかへ捨ててしまおうと、米友は油断なく左右を見廻して行ったけれども、容易にその下駄一つの捨て場がわかりません。ついには土を掘って埋めてしまおうかとも思いましたけれど、そうもしないで、ほとんど小一里の間、米友はその下駄をぶらさげて歩いてしまいました。
右の足の跛足である米友が、女の下駄を片一方だけ持ち扱って歩いて行くことは、判じ物のような形であります。
十一
その後ムク犬は、駒井と神尾と両家の間を往来するようになりました。お君のムク犬を可愛がることは昔に変らないが、その可愛がり方はまた昔のようではありません。自分で手ずから食物を与えることはありません。またムクと一緒にいる機会よりも能登守に近づく機会が多いので、自然にムク犬に対するお君の情が薄くなるように見えました。しかし、お君はムク犬を粗末にするわけではなく、ムク犬もまた主人を疎んずるというわけではありませんでした。