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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
Read 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 31,249 characters · 62 screens
「そんな事も聴いたようだな」
「松前屋三郎兵衛は、松前様のお金を融通して、一代に万という金を拵えたが、主人三郎兵衛は、女房のお駒と、小さい娘のお君を遺して五年前に病死――それにも変な噂がありますが、ともかくも、用心棒においた居候の浪人、松平源左衛門というのが、ズルズルべったり、祝言なしで後家のお駒といっしょになり、平松屋と暖簾を染め直して、金貸稼業をつづけたが、不思議なことに、先代の松前屋三郎兵衛が溜めておいた筈の、一万両近い金が、どこに隠してあるかわからない」
「フーム」
「一万両の金の見付からない自棄もあったでしょう。平松屋源左衛門は三年前から女道楽をはじめ、年上の女房お駒が嫌になって、茶汲あがりのお万というのを引入れ、女房のお駒と、先代松前屋の娘お君を邪魔にし、離屋へ別に住まわせることにした」
「薄情な野郎だな」
「一万両の金が目当ての入婿だから、金が無いとわかると、年上の女は邪魔にもなるでしょうよ。ところが、女房のお駒はきかん気の女で――少しは気も変になったでしょうが、――私は此家の心棒だから、梃でも動かないと言い出し、離屋の窓々に頑丈な格子を打ち付け、四方の戸に錠をおろして、鍵は自分の手に持ったのが一つだけ、娘のお君のほかには、誰も離屋に寄せつけない。