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ぜにがたへいじとりものひかえ

奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選

野村 胡堂

Read 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 31,249 characters · 62 screens

Aozora Bunko

「あ、なるほど、わけもなく開きますね、そこを開けると、三寸ほどの隙間から、部屋の中はよく見えますが、――この狭い隙間からじゃ人は殺せませんね」

八五郎は梯子の上から声を張り上げます。

「死骸までそんなに遠いのか」

「二間半はありますね」

「フーム」

平次は何やら考えておりましたが、

「あッ、血、――梯子の中ほどに、血が付いていますよ、親分」

「そんな事だろうと思ったよ、蔀の間に血が付いたところはないか、念入りに捜してみな」

「あ、ありますよ、梯子を掛けた場所よりは、グッと右へ寄って、母家の二階の屋根に近く」

「やはり殺しですね、下手人は誰でしょう」

番頭の為之助は胆をつぶした様子です。

「そんな事がわかるものか、――それにしても下手人は大した腕だな、――番頭さん」

「ヘエ」

番頭為之助は解ったような、ポカンと口を開いております。

「この家に槍はあるだろうな」

「主人の元が元ですから槍は二本ございます、六尺の手槍と、二間半の大身の槍と」

「何処にあるんだ」

「母家の廊下に掛けてあります」

「行ってみよう」

四五人ひとかたまりに、母家へ入りました。見ると廊下の上、長押に掛けた槍が二本、手槍の方は提灯を掲げて見ると埃を被っていて、これはモノにならず、二間半の大身の槍を引下して、毛皮の鞘を払ってみると、