Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
Read 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 31,249 characters · 62 screens
「御苦労様でございます」
小腰を屈めて行き過ぎようとするのを、平次は呼び留めました。
「昨夜お前はどこへ行っていたんだ。お君が殺される少し前だ」
「ヘエ」
「はっきり言わないと面白くないことになるぜ。お前はお君を怨んでいた筈だし、――背後からひと突きして、外へ出て改めて引っ返して来る手もあるわけだ」
「とんでもない。親分さん」
「だから、どこへ行っていたか。はっきり言うがいい」
「申さなきゃなりませんか。親分さん」
「当り前だよ。隠しおわせることじゃあるめえ」
平次の態度は峻烈で少しの容赦もありません。
「私は福寿院の境内へ行って、半刻(一時間)ばかり人を待っておりました」
「誰を?」
「お二人――お君と万次を待っていました」
「?」
「お君が伊賀井様へ奉公に上がることにきまると、万次はお君に家を逃げ出すようにすすめました、――私はフトしたことで二人の相談を聴いたのですから、間違いはございません、――万次は小田原とかに叔母がいるそうで、そこまで行って、暫く身を潜め、路用を拵えて上方へでも行こうという話でした」
「?」
「こんなことを申してはなんですが、万次という男は信用のできる男ではございません。