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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
Read 女心の強ければ (おんなごころのつよければ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,011 characters · 94 screens
「あなたは、どうしても明日、お帰りなさるの。」
「ええ。」
長谷川は軽く頷いた。
「東京へ?」
「一応、帰ります。」
「明日でなくては、いけませんの。」
「明日と限ったことはありませんが、とにかく、ここをたちます。」
「東京へは、明後日でも宜しいんですね。」
長谷川は彼女の顔を見たが、表情では何も読み取れなかった。
「どういう意味ですか。」
「いえ、それだけ承っておけばいいんですの。」
長谷川は言質を取られたのを感じた。そのあとは、とりとめもない言葉だけで、そして沈黙がちな食事。
千代乃はなにか忙しそうだった。
夜は、辰さんが早くにやって来て、早く寝てしまった。
長谷川も早めに寝た。自分でも案外なほど、千代乃の肉体に未練を感じなかった。余りに考えすぎたからだったろうか。
四
風があって、空には白い雲が飛んでいた。その朝になって長谷川に千代乃は言った。
「わたしも、ちょっと東京へ行くことにしましたの。御一緒にね。途中、湯ヶ原で降りましょう。天城山の代りよ。」
彼女は楽しそうに笑った。昨夜とちがって、何の屈託もなく朗かそうだった。
長谷川は呆れた。だが、もう成り行きに任せようと覚悟をきめた。