Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いえ
家
島崎 藤村
Read 家 (いえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,411 characters · 285 screens
往時の隅田川では無いネ」
と三吉は眺め入った。
岸について両国の方へ折れ曲って行くと、小さな公園の前あたりには、種々な人が往ったり来たりしている。男と女の連が幾組となく二人の前を通る。
「正太さん、君は女を見てこの節どんな風に考えるネ」
「さあねえ――」
「何だか僕は……女を見ると苦しく成って来る」
こう話し話し、三吉は正太と並んで、青物市場などのあたりから、浜町河岸の方へ歩いて行った。対岸には大きな煙突が立った。昔の深川風の町々は埋立地の陰に隠れた。正太は川向に住んだ時のことを思出すという風で、あの家へはよく榊がやって来て、壮んに気焔を吐いたことなどを言出した。
その時、彼は岸に近く添うて歩きながら、
「榊君と言えば、先生も引込きりか……あれで、叔父さん、榊君の遊び方と私の遊び方とは全然違うんです……先生の恋には、選択は無い。非常に物慾の壮んな人なんですネ……」
電車が両国の方から恐しい響をさせてやって来たので、しばらく正太の話は途切れた。やがて、彼は微笑んで、
「そこへ行くと、私は選む……一流でないものは、妓でも話せないような気がする……私は交際で引手茶屋なぞへ行きましても、クダラナい女なぞを相手にして、騒ぐ気には成れません。