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かんちゅうたいがくき
寒中滞岳記
野中 至
Read 寒中滞岳記 (かんちゅうたいがくき) by 野中 至 (のなかいたる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,295 characters · 16 screens
かくの如くにして、やや堵に安んぜんとするを、造化はなお生意気なりと思いしか、将たまた更に予を試みんとてか、今回は趣向を変えて、極めて陰険なる手段を用いジリジリ静かに攻め来りたり、そは他に非ず、気圧の薄弱これなり、人の知る如く、平地の気圧は、大抵七百六十耗前後なるに、山頂は四百六十耗前後にして、実に三百耗の差あり勿論夏期とてもなお同様なりといえども、寒気増進するに及びては、ますます低落の傾きあり、故に静座するもなお胸部の圧迫を覚え、思わず溜息を吐くことあり、いわんや労働するに於ては、呼吸ますます逼迫するを覚ゆ、しかも先きの攻め道具たりし寒気と風力とは、ますます猛烈を加うるのみにして、更にその勢を減ずることなし、剰さえ強猛なる寒気は絶えず山腹の積雪を遠慮会釈なく逆しまに吹上げ来り、いわゆる吹雪なるものにして、観測所の光景はあたかも火事場に焼け残りたる土蔵の、白煙の中に包まれたるに似たり故に一天拭うが如く快晴なるも、雪は常に降れるに異ならず、実に平壌の清兵も宜しくという有様にて、四面包囲を受けしなり、ために運動意の如くならず、随て消化力減少して食気更に振わざるを以て、食物総て不味にして口に入らず、およそ食事の如きは普通かかる