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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Read 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 365,120 characters · 728 screens
「するてえと何ですかえ、神田の津賀閑山も同類なんで?」
「いや、そんなこたああるめえ。とはいうが、これあほんの俺の気持ちだからな、閑山も当分にらんでおかざなるめえて」
「なるほど。妻恋坂の饗庭は? 親分」
「饗庭は臭え。が、大物だからな。よほどつかんでかからねえことにあ思わぬどじを踏むぜ。まあ、遠巻きだ。それが上策よ」
いい終わって、文次は腕を組んだ。
眼を伏せて、膝の上の御用帳をみつめている。
この御用帳というのは、いわばいろは屋の自家用覚え書きで、お役人からおおせつかった探索の用事、市井で起こった事件、それらに関する聞き込みなどを、忘却を防ぐために雑然と書きとめておく帳面であった。大福帳みたいに筆太に御用帳と書いた、半紙を横折りにとじた帳面がいつも居間の壁にかかっていた。それが、いろは屋名代の御用帳であった。
文次は今この御用帳のあるところを開いて、しきりに眼を走らせている。
――こんなことが書いてある。
先般来、江戸に男女二人づれの押し込みが横行して、昨夜は本郷、今夜は芝といったふうに、ほとんど毎晩八百八町を荒しまわったが、先夜この男女の強盗が万願寺屋という品川の造り酒屋へはいって、大奥のお賄方から酒の代に下しおかれた五百両の小判を奪い去ってからというものは、いっそう詮議がきびしくなった。