Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ゆうれいとスクリュウ
幽霊と推進機
夢野 久作
Read 幽霊と推進機 (ゆうれいとスクリュウ) by 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,905 characters · 24 screens
その中に交った黒ん坊の給仕も、生石灰で火傷をした手の甲の繃帯を巻き直しながら、不平そうに涙ぐんでいた。
船長も片手で綱を掴みながら、その黒ん坊が給仕する生ぬるい水を二三杯、立て続けに飲んだが、ヨッポド胸が悪かったのであろう。そうしてコップの中をジイッと透かして見ているうちに、間もなく低い声で、
「……ボン……」
と叫んだと思うと、飲み残しの水をパッと床の上に投げ棄てながら、皆の顔を見まわして冷笑した。
皆は真青になった。何かしら薄気味悪い、暗い気持に船全体が包まれている事実を、船長とおんなじように感じているらしかった。
そのせいか二人の死骸は、極力念入りに包装された。そうして大揺れの下甲板に粛々と担ぎ上げられると、午後の正四時に船長がヒューウと吹き出した口笛を合図にして、厳かな敬礼に見送られつつ水葬された。
その黒長い二つの袋が、船よりもズット大きい波の中に、泡の尾を引いて吸い込まれて行くと間もなく、私達の背後からケタタマシイ爆音が起ったので、皆ビックリして振り向いた。それは、どこから探して来たものか水夫長が、支那製の爆竹に点火して、二人の霊に手向けたものであったが、その花火筒のアクドイ色彩を両手にブラ下げて、起重機の蔭から舷側によろめき出た水夫長のうしろ姿が、不思議なほどゲッソリして見えた。