Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あくいんねんのうらみ

悪因縁の怨

江見 水蔭

Read 悪因縁の怨 (あくいんねんのうらみ) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,705 characters · 28 screens

Aozora Bunko

「そんな事かも知れない。若殿の姿が見えないのだからな」

「こうなると主人の敵だから、打棄っては置かれない。宗匠も助太刀に出て下さい」

「女ながらも強そうだ。返り討は下さらないね」

そう云っているところへ、船は段々近寄って来た。

「娘の髪が余りキチンとしていますぜ。些とも乱れていませんが、能く蘆の間で引懸らなかッたもので」

「巻直したのだろう」

「濡れていませんぜ」

「当前さ、帆で屋根が張ってあるから大丈夫だ」

「おやおや、帆屋根の下に屍骸がある。若殿が殺されていますぜ」

「なに、寝ていらッしゃるんだろう」

六浦琴之丞、起上って極り悪るそうに、帆の下から顔を出して。

「えらい夕立だッたね」

こちらの二人は顔を見合せて。

「まア好かッた。しかし、顔色がお悪いね。未だ御腹痛かも知れない」

「腹痛に雷鳴に女船頭、三題噺ですね」と囁き合った。

七

秋晴の気も爽やかなる日に、羽田要島の弁天社内、例の茶店へ入来ったのは、俳諧の宗匠、一水舎半丘。

「お嬶さん、いつぞやは世話になった」と裾の塵を払いながら、床几に腰を掛けた。

「おや、今日は御一人で御座いますか。この夏には余分にお茶代を頂きまして……」