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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
さすれば、大いに、朝へおとりなしの儀もしよいと思うが」
桃花山には近来、打虎将李忠が住みついていた。
この李忠の前身は、かつて魯智深がまだ花和尚といわず、渭州の町で憲兵をしていた時代、同じ町の辻で、膏薬売りをやっていたあの香具師の痩せ浪人の崩れなのである。
「いけねえ、いけねえ。兄き、さんざんな目に会ッちまったよ。はやく助太刀に出てくんねえ」
「どうしたい周通」
「どうもこうもねえ。青州奉行の軍隊が来たッていうんで、いつものとおり、山寨の木戸をおっ開いて、ただ一ト蹴散らしと出て行った。ところが、まったく勝手が違った。こんどの討手の大将は凡物ではねえ」
「梁山泊で敗けて来た官軍方の将軍、呼延灼という野郎だろう。……そいつが来ることは、おとといの晩からわかっていた」
「わかってはいたが、ああ強いとは思わなかったよ。双手で薄がねの鞭をつかい、そばへ寄りつくこともできねえ」
「奴のほかに、奉行所の軍兵は」
「ざッと、二千か」
「そいつはだめだ。敵いッこねえ。稀代な名馬は、先の晩に、こっちへ貰ッてあることだし、この上、ヘタな欲を掻くと、資本も子も失くしちまわぬ限りもねえ」