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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
「はて。ならんと仰せなれば、ぜひもない。――しかし、いかなる難が降ッてわいても、おさしつかえはないのだな」
「な、なにを」
「ま。おちついて最後をお決めなされたがよい。しばし、大臣ご自身の返答をお待ち申すとしよう」
ふたりの後ろには、李応、朱同、そのほかが、鎗を持って、睨んでいる。
陸ではこのとき、花栄、呼延灼などの弓組が、官船三隻を、鏃のさきに見すましていた。対岸にいた埋伏の兵もいちどに姿をあらわしていた。だから効き目は充分こたえたものにちがいない。
「やあ、これは、これは……」
ついに、船屋形の帳を払って、自身みよしに出て来た宿大臣は、今はその沽券もすて、
「義士――」
と相手を呼んだものである。
「そも、何の御用じゃの。儂は朝廷の重臣、かつは聖旨を帯した参詣の途中での」
「わかっています。なればこそ、ていねいに、こうお迎えにまいっておる」
「はて、お迎えとは怪しからんはなしじゃが、いったい何処へ」
「近くの、山寨まで」
「えっ、山寨へだと。ば、ば、ばかげたことを」
「おいやか」
「か、かりそめにも身は……」
すでに歯の根もカチカチ言葉もなさない声音である。そこへ持ってきて、このとき、官船の横ッ腹へどんとぶつかって来た小舟がある。