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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
姦夫の足業は武大を悶絶させ、妖婦は 砒霜の毒を秘めてそら泣きに泣くこと
「み、みてやがれっ。くそばばめ」
ベソを掻き掻き、※(「軍+おおざと」、第4水準2-90-23)哥はそこら中にころがり出した梨や杏を籠へ拾いあつめ、あとも見ずに、その日はついに逃げ出してしまった。
姦夫の足業は武大を悶絶させ、妖婦は
砒霜の毒を秘めてそら泣きに泣くこと
武大はいつもの公園に出て、蒸饅頭の蒸籠店をひろげていた。陽も午さがりの頃である。池の鵞鳥ばかりガアガア啼いて、ここの蒸饅頭は一こう人も振り向かない。
「ええおい、武大さんよ。嘘じゃないよ。ほんとのことを教えたんだぜ。だのに、まだ疑っているのかい」
哥はくやしまぎれに、また日ごろ親しい武大でもあるので、ここへ来てのこらず喋舌ってしまったらしい。
ところが、肝腎な武大のほうでは、一こう真にうける風がないのだ。あくまで金蓮を庇っている。しかも街道一の古舗の大旦那が、ひとの女房に手を出すはずがあるもんか。と笑ってばかりいるのである。
「焦れッてえな、武大さんときたら。だから世間でいうんだよ。ッ垂らしの薄野呂だッて。――見ねえな、おらの顔や手頸を」
「あれ坊。その傷はまあ、どうしたわけだい」
「これもみんな武大さんのためじゃないか。